社会事業史学会新会長挨拶

 本学会は1973年5月に社会事業史研究会として、初代会長の吉田久一先生、一番ケ瀬康子先生、高島進先生等21人の発起人の先生方のお力によって発足いたしました。それから40年あまりを経ましたが、この間、1998年に社会事業史学会へと改組され、社会福祉学界における歴史研究者の拠点として、また社会福祉学界における学術研究の一領域として今日まで発展して参りました。そして前会長の永岡正己先生には8年間にわたり歴史研究をリードされるとともに、今日の学会としての体制の礎を築いていただきました。さらに本学会には吉田久一先生をはじめとする篤志をお寄せ下さった先人達がおられます。

本学会は、この学会に参集し、その歩みを支えてこられた多くの研究者のみなさま、学会員のみなさまの学術研究への強い意欲と高い精神性によって支えられてきたと確信いたしております。この度、自らの非力さを顧みず会長職を拝命いたしましたが、学会の発展に微力ながら力を尽くしたいと考えております。みなさまのご指導とご協力を引きつづき賜りたく、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

本学会の目的は学会規約第3条に明記されますように「社会事業史の研究を通じ、社会福祉の科学的研究を高め、民主主義に基づいた日本社会福祉の進展に資すること」であります。今日、発展・変貌する社会福祉の動向を見極め、歴史研究の立場からその方向性を吟味し、真に人々の生活に寄り添うための問題意識を共有しつつ、本学会が設立当初から掲げてきた理念をみなさまと共に継承し、社会的使命を果たしていきたいと願っております。

本学会が取り組む必要がある課題は数多いのですが、その一つは、歴史研究の更なる質的向上と研究領域の多様性および拡張をはかることです。関連領域との学術的交流や国際的学術交流が、新たな研究上の挑戦を生み、こうした側面を強化してくれるはずです。そして、研究の質的向上に基づき、社会福祉教育における歴史的思考の有意性を対外的に働きかけていくことが重要です。もう一つは、歴史研究の発展をはかるうえで欠かせない史資料の発掘や保管および地道な地域史、施設史への取り組みと研究方法論探求の重要性です。

社会福祉あるいは福祉の歴史研究が、高く、厚く、深いものとなるよう引きつづき取り組んでまいりますとともに、歴史的研究に関心をもつ多くのみなさまの本学会へのご参加をお待ち申し上げております。

2015年5月10日 大友 昌子