会長挨拶

ご挨拶

会長 金子光一

 2024年5月12日の総会で、会長に選出して頂きました東洋大学の金子光一です。伝統ある社会事業史学会(以下、本学会)の会長を2期にわたって担わせて頂くことになり、大変光栄なことと思っております。2027年5月まで精一杯務めさせて頂きますので、引き続き、お力添え頂きたく宜しくお願い申し上げます。

 さて、2024年5月11~12日、第52回全国大会を私の本務校である東洋大学赤羽台キャンパスで開催させて頂きました。お陰様で100名近い方々にご参加頂き、盛会に終えることができました。心より感謝申し上げます。

 今回の大会には、中国慈善史学会・会長の周秋光先生、韓国社会福祉歴史学会・会長の林元善先生をお招きすることができました。また両先生と「日本・韓国・中国における学術交流の推進に関する覚書」(通称「三ヵ国覚書」)の調印を行わせて頂きました。これにより今後益々三ヵ国の国際交流が活発化することを願っております。

 東洋大学の学祖・井上円了は、1887年(明治20)年に東洋大学の前身の哲学館での教育活動を、春日局の菩提寺として有名な麟祥院の一角をかりてスタートさせました。
円了は、その時に「哲学館創立の精神」という言葉を残しています。
「哲学館創立の精神は、晩学の者、貧困者、語学力のない者に教育の機会を開放するということである。」
 年を取ってから学問を志す人、お金のない人、これまで語学を学ぶ機会がなかった人が、世の中に多くいて、それらの人たちの学びの「場」として哲学館を創立しました。そこには、学問をするのは若くなければならないとか、お金がなければならないとか、語学力がなければならないなどの古い明治の価値観を転換し、「新たな価値」を創造しようとする精神(アントレプレナーシップ)があったように思います。

 価値は不変ではなく変わるものです。現在、科学技術・情報通信分野を中心にさまざまな領域で新たな時代に即応した価値を創造することが求められています。生成系AIに対応するためのルール作りも、合理的配慮の提供の義務化なども、「新たな価値」に基づいているものです。これからは、これまでの考え方や方法に固執せず、「新たな価値」を創造し、よりよい社会を共につくることが重要だと考えます。本学会も歴史研究を行う学会ではありますが、常にそのことを意識しなければならないと思います。

 なお、本学会は、50周年を迎えるにあたり「学会創設50周年記念事業委員会」を設置し、『記念論文集』の出版、『50年史』の刊行、「50周年記念大会」の開催という三つの大きな柱をたて、記念事業を推進して参りました。会員の皆さまのご協力で『記念論文集』は、2022年10月末に近現代資料刊行会より発行することができ、『50年史』も今年12月に刊行予定です。
 「50周年記念大会」は、共通論題報告において、3回にわたって日本の近現代史を取り上げました。
 まず、オンラインで行いました2022年の第50回大会では、1950~60年代を中心に、社会福祉の「制度・政策」「実践・方法」の特質を歴史的視点から明らかにしました。また、昨年2023年の第51回大会は、千葉県にある淑徳大学を会場として対面で実施しましたが、1960~70年代を中心に教育、労働、経済、社会など幅広い視野から戦後史を考え、隣接領域との関係を踏まえて社会福祉の位置づけを確認しました。そして今回の第52回大会では、日本の福祉専門職の到達点と今後の課題について、専門職を取り巻く構造の変化を踏まえながら、ご参加頂いた皆さまと検討しました。

 今回の共通論題報告は、日本のソーシャルワークの歴史の総括といえるように思います。「地域共生社会の実現」が叫ばれる今日、地域社会でニーズを抱えている人たちを支援する「主体」が変化すると同時に、社会福祉専門職を取り巻く状況は大きく変わってきています。歴史的に積み重ねてきたものをどう評価するのか、反省すべき点はどのような点なのか、社会福祉の専門職の立場とあり方に関する有益な議論ができたように思います。ご登壇頂いた皆さまに心より感謝申し上げます。

 来年の第53回大会は、青森県弘前市にある弘前学院大学で開催します。大会の詳細については、理事会内の研究委員会を中心に検討を重ね、改めて会員の皆さまにお知らせしますが、「50周年記念大会」後の大会ですので、「新たな価値」を創造できる大会を目指したいと思います。
 まだ山頂に雪が残る岩木山と可愛いりんごの花をいたるところで目にすることができる弘前市で、本学会の大会を来年2025年5月に開催できますことを大変嬉しく思います。
 皆さま、奮ってご参加頂きたくお願い申し上げます。